「〇〇さん辞めたらしいですね」
シンガポール在住の知人が、長らく働いた会社を最近辞めたらしいという話が人伝に私の元に届いた。
私「嘘でしょ?なんで?」
かれこれ20年以上に渡りシンガポールにて勤務し現地子会社の実質社長の立場まで出世していた男である。
会社からの高待遇だけでなく、自由になんでも出来てしまうような最高のポジションではないか。
なぜそれを捨てる必要があるのだろうか?
気になって別の共通の知人に尋ねてみたところ、どうも理由は業務上横領であり、それにより懲戒解雇されたと言う。
なるほど、それならば納得できる。
というか仕方がない。
解雇されても仕方がないのである。
オーナー社長の学生時代からの友人であるだけでなく、社歴からみてもトップに当たる。
共通の知人曰く「古くからの友人である社長の期待を裏切るようなことをしてしまったな」
否、私からすれば何ら期待を裏切ってなどいない。
それどころか期待通り、いや予想通りである。
私自身も20代の頃より彼をよく知っており、いかにもそういう事をしそうなタイプだったからである。
そういう人間を20年も外地支店のトップに居座わらせたならば、そういった行為(横領)がどんどんエスカレートするのは必然である。
私にすれば、とっくの昔から分かりきった話でしかないのである。
同じ立場に置かれたら、同様に横領するタイプの人間はある一定割合で必ずどこにでもいるのでは無いだろうか。
問題は如何にもそんなことをやりそうなタイプの人間を外地の代表に据えて20年も駐在させた経営者自身の判断に問題がある。
私がもし当の経営者の立場ならばそんなタイプの人間をそんなポジションには置かないだろう。
本社から目の届かない遠く離れた支店のトップに据えていいのは、利己に走って横領したり、怠惰になったりしない自律した人間でなければならない。
人の内面は直ぐには見抜けないと言う意見も分からなくもない。
とは言え、誰から見ても分かるような”明から様にそんな事をしそうなタイプ”の人間を外地支店のトップに据えるのは論外である。
要は適材適所の問題なのである。
結果的に会社の財産を散々横領された挙句、貴重な人材(?)をも同時に失うことになった訳である。
他にもっと能力を生かす配置があったに違いない。
良き経営者は各社員の性質や資質を知り、その能力を最大限引き出す事が出来る。
凡庸な経営者は各社員の性質や資質に無頓着で、時にその悪しき性質を肥大化させる。
だとしたら、この問題の根本原因は経営者の資質の欠如にあると考えられなくもない。