三年寝太郎ライフ
人生にも、ほっと夏休み
ネパール旅行記

ネパール旅行記 第九話 友情の別れ道

「 I am done ! No , I am done ! 」

静止する私の言葉を遮ってそう言い放ち、怒りに任せて彼は部屋を出て行ってしまった。

なるほど、こうゆう結果になったか・・・。
残念だが、分かってくれないのなら仕方がない。

他の二人には悪いけれども、受付に事情を話して今から別のホテルに移らせてもらおう。
逃げると言う訳ではないけれども、気まずい空気にこれ以上浸る必要も無いだろう。
そう、これでもう彼との友人関係はたぶん終了したのだから・・・。

筋肉痛でパンパンに腫れてしまった両足を、何とか動かしてベットから立ち上がる。
右膝を痛めたせいで真っ直ぐ立つことすらも出来ない。

そう、確かにあれは些細なことだった。
それでも私にとっては大切な意味を持つ。

真の友人関係において最も重要なものは信頼関係である。

何よりいけないのは心に湧いた疑いをそのまま放置することにある。
些細なそれは、やがて積み重なっていき、いつか関係を終わらせる。

それは友人関係でも、婚姻関係であってもきっと同じなんだろう。

話は今朝の4時まで遡る。
早朝起床して、これから最終目的地であるプーンヒルへ出発しようとしていた時のこと。

1.5リットルの水の入ったペットボトルをこちらに寄越せと言ったのは彼の親切心からである。
これから1時間近くビューポイントまで登らなければならない。
少しでもこちらの負担を減らす為に、全員のペットボトルを彼のバックパックに入れて預かってくれると言うのである。

ここ数日ですっかり疲労困憊の私は、彼の親切に甘えることにした。

私「有難う」

そう言って彼のバックパックに入れたすぐ後で、一口だけ飲みたくなりもう一度ボトルを取り出すことにした。
バックパックの中にある何本かのペットボトルのうちの一つを引っ張り出す。
そのラベルを見た彼が「それは君のだ」と私に言う。

それからボトルを開封して一口だけ飲んで、また彼のバックパックにしまう。

往復二時間掛けてプーンヒルまで登り降りした後で宿に一旦戻り、急いで部屋に直行する私。
冷たい雨風で身体がすっかり冷えてしまった。
早く暖かいシャワーを浴びて着替えないと、体調を悪化させてしまうだろう。
まだこれから長い距離を下山しなければならないと言うのに。

シャワーを浴びて着替えてから、ベットに潜り込んで再び急速充電を行う。
朝食までのたった15分ですらも、疲れた私の体には貴重な休息時間である。

それから朝食をみんなで摂ってから、五人で下山を開始した。

暫くした後で、彼がバックパックからペットボトルを取り出して飲んでいたので、
彼に尋ねる。

私「私のボトルは持ってるよね?」

友人「これは私のボトルだ、君のは知らない。」

大きなジェスチャーを加えて「そんなの知るかよ」と言う彼に驚きを隠せない私。

何でそんなことを言えるのだと神経を疑わずにはいられない。

飲んだならそう言えば済む話であるし、紛失してしまったとしたらゴメンと一言言えば
それで済む話ではないか。

何より、預かってやるから寄越せと言ってきたのは君じゃないか?

そんな風に心の中で思ったけれど、そんなことで言い争っているところを他のメンバーに見られたくもない。
事情を知らない他のメンバーから見れば、たかが水ごときの話である。
何より場の良い雰囲気を壊すのを私はいつも一番嫌って争いを避ける。

その場の不快な気分をグッと堪えて言及するのは止めにした。

私にとっては友人が私をどう扱うかと言う事が最も重要なのである。
こちらを見下したり、ぞんざいに扱ってくるようであればそれはもう友人とは呼ばないからである。

友人でも夫婦関係でもこれは変わらないだろう。
片方がもう片方を支配的に扱っているとしたら、それは友情でも愛情でも何でもない。
夫婦だとしたら即関係を解消するべきだろう。

ここで私が一番恐れているのは、”私にとって大切な友人を失う”と言う結末である。
だから相手が大切な友人であるならば、なお一層こちらをぞんざいに扱わせてはいけないと言うことになる。

兎に角、これについては下山後に彼に話すことにしようと決めた。

友人ならば、相手の気持ちを理解しようとする努力を惜しんではならない。
真の友人に対しては、自分の気持ちを素直に伝えなければならない。

下山後ホテルにチェックインし、シャワーを浴びてから彼にメッセージを送った。
私「ちょっと夕食前に二人で話せないか?」

それから数分後に、隣の部屋から彼がやってきて部屋をノックする。

さてと、ハーバード大卒の国際弁護士相手に私の理論がどこまで通じるだろうか・・・。

法廷で会いましょ!

会話の流れ

弁護士「どうしたんだい改まって」

私「まず確認したい」
私「友人ならば相手に対して素直にならなければならないよね?」
私「友人ならば相手の気持ちを理解しようとする努力は必要だよね?」
私「異議は無いか?」

弁護士「もちろんだ、一体何なんだ」

私「今朝のことで、私は嫌な気分になったんだ」
私「ペットボトルの水を預かるって言ってくれたのは君じゃないか、そしてそのボトルもはっきりと君は認識していた。なのに何故’俺は知らない”なんて言えるんだい?」
「君が知らなければ一体誰が知ってるんだ」
「飲んだならそう言えば済む話だろう?」

弁護士「他の二人には返したけれど、君のは知らない」
弁護士「宿に戻ってから、レストランの机の上において置いたんだ。誰かが盗ったのかもしれない」

私「だったらそう言えばいいじゃないか、言葉が足りなさ過ぎるだろう」

弁護士「たかが水ぐらい買えよ」

私「そういう問題じゃない」

弁護士「もう沢山だ!」

去ろうとする弁護士

私「ちょっと待てよ」

弁護士「いいや、もう沢山だ!」

ジェスチャーを交えて怒りを露わにしながら、彼は部屋をそそくさと去って行ってしまった。

私は一度も言葉を荒げてなどいない。
ただ、冷静に説明をしただけである。

知り合って以来三年、いつも彼はいいやつだった。
ハーバード大学卒業の富豪の長男として生まれても、傲慢になることもなく、
誰とも分け隔てなく付き合う本当にいい奴だった。

彼にとっても私は貴重な親友の一人だったはずだ。
いつも何かにつけて誘ってくれるアイツ。

残念だが、分かってくれないのなら仕方がない。

他の二人には悪いけれども、受付に事情を話して今から別のホテルに移らせてもらおう。
逃げると言う訳ではないけれども、気まずい空気にこれ以上浸る必要も無いだろう。
そう、これでもう彼との友人関係は終了したのだから・・・。

ここが友情の分かれ道

筋肉痛でパンパンに腫れてしまった両足を、何とか動かしてベットから立ち上がり、気合を貯めて一歩を踏み出そうとした刹那、誰かがドアをノックする音が聞こえた。

続く・・・

真の友情と愛情に必要なもの

相手に対して素直になれること
相手の気持ちを理解しようと努力すること

違うのか!?

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ABOUT ME
藍井 隆
アラフォーにて失意の失職、屈辱に塗れて人生のどん底を味わう。 その後三年間を期限とした計画的無職”三年寝太郎計画”を経て、現在アラブ首長国連邦ドバイ在住、日系企業ドバイ支社代表、趣味は世界旅行。 著書:三年寝太郎アラフォー無職世界放浪記

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